スイッチング電源の原理とレギュレーターの効率

レギュレーターとは

電源。それは、電子機器を作る上で絶対に欠かせないコンポーネントの一つである。乾電池駆動から、AC電源、ソーラーパネル発電、エナジーハーベストに至るまで、必ずなんらかの電源に相当する部品が必要だ。もちろん、おなじみの組み込み機器も例外ではない。

IoT端末やエッジデバイスなどは、低消費電力化の一途をたどっているものの、クラウドやAI、アクセラレーションなどの消費電力はまだまだ大きい。特にコンピューティング・プラットフォームやオートモーティブ等において、DC12Vおよび24Vによる給電が一般的であるが、さらに大電力化が求められている。そのため従来のDC12Vおよび24Vによって供給されていたシステムにおいても「DC48V」による給電がすでに始まっており、今後も加速していくことが考えられている。

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しかも、これらのプラットフォームのコア電圧は、2.5Vや1Vといった低電圧かつ数十Aの大電流が求められている。半導体プロセスの進化と並び、この流れを止めることはできそうにない。であれば、電源が対応するしか選択肢は残されていないのである。

そうなると、レギュレーターを使用するのが一般的だ。レギュレーターには「リニア方式」と「スイッチング方式」がある。どちらにも、メリットがあるが、大電力で高効率を求められる今、「スイッチング方式」の電源(以下、スイッチング電源)一択である。

DC48V電源のメリット

ところで、なぜ「DC48V」に注目があつまっているのか?それを知るには、DC48Vのメリットを挙げた方がいいだろう。

「スイッチング電源によるDC48V給電」のメリット
  • 従来のDC12Vおよび24V給電と比べ配電損失を大幅に抑えることができる
    配電損失(P)=配電経路の抵抗(R)x 配電電流の2乗(I2)

  • 配電ケーブル(配電経路)のケーブル径を小さくできる

このメリットを享受するためにも、「スイッチング方式」を選択するしかない。

「リニア方式」は、回路は簡単だがロスが大き過ぎてしまう。しかも、そのロスは、熱となって放熱する以外に対処不可能なのだ。しかし、スイッチング電源もメリットばかりではない。スイッチング電源の性能に最も求められていることは、「高効率化」と「小型化」だ。

スイッチング電源とは

高効率化を実現するためには損失電力を低減することが必要となり、小型化を実現するためにはスイッチング周波数の高周波化が挙げられる。

スイッチング電源の仕組み

まずは、スイッチング電源で使用されている一般的な非絶縁型降圧レギュレーター(同期整流)を例に挙げて説明する。

以下の図は非絶縁型降圧レギュレーターを表す。降圧型のスイッチングレギュレーターは、インダクタを接続しFETをON/OFFさせる比率により出力電圧を降下させる。

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Q1=ON、Q2=OFFの時、電流(赤)はインダクタを通り負荷に流れる。次にQ1=OFF、Q2=ONの時はインダクタに流れていた電流を維持しようと電流(青)が流れる。

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スイッチング周波数f(Hz)を高くすると、インダクタンスおよびコンデンサ容量を小さくしても同様のリアクタンスを得ることができる。

  • インダクタのリアクタンスXL=2πfL
  • コンデンサのリアクタンスXC=1/2πfC

このことからスイッチング周波数を高周波化することは、スイッチング電源の小型化へとつながることが理解できる。

しかし、スイッチング周波数の高周波化はMOSFETのスイッチングによる電力損失を増加させることにもつながる。そのためスイッチング周波数を高くしすぎるとFETの電力損失増加による発熱が大きくなり、冷却のため大型化させることになってしまう。これは高効率化、小型化の目的を反してしまう。よって、FETのスイッチングロスを減少させるスイッチング方式が必要となってくる。

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ゼロ電圧スイッチング(ZVS)は従来のハードスイッチングからFETのスイッチングロスを減少させることにより、スイッチング周波数の高周波化を実現させる方式だ。

スイッチングロスとは

ハードスイッチングのスイッチングロス

一般的なハードスイッチングでは、以下のすべてが損失になる。

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  • MOSFETの電圧と電流波形の重なりによるエネルギー損失(P = V x I)
    1. Turn-ON損失
    2. Ton導通損失
    3. Turn-OFF損失
  • MOSFETの出力容量損失
  • MOSFETのゲート容量損失

ゼロ電圧スイッチング(ZVS)ではFET(Q)のドレイン~ソース間電圧(Vds)が0Vになった時にFET(Q)をONさせることにより、Vdsと電流(Ids)が重ならない状態にする。これにより FET(Q)のTurn-ON損失を削減する。

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※Vicorでは上記のような共振型ではなく独自の方式によりゼロ電圧スイッチング(ZVS)方式を採用している。

ZVSソフトスイッチングのスイッチングロス

ZVSを用いる事により、Turn-ON損失、MOSFETの出力容量損失を削減できる。

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ゼロ電圧スイッチング(ZVS)は従来のハードスイッチングに比べ十分な高効率・高周波化を実現している。これは一般的なアプリケーションにおいて容易に小型・高効率なスイッチングレギュレーターを提供することが可能だ。

次回の実験室では、Vicor社のZVSのみではなく、Turn-OFF損失を削減させるゼロ電流スイッチング(ZCS)を併せた更なる高効率スイッチング技術について紹介するので楽しみにしていただきたい。

Vicor社のCool-Powerシリーズ「PI3545-00-LGIZ」は高い入力電圧(48V)から低い出力電圧(5V)へ小さい損失電力で高効率に変換出力を行なうことが可能だ。

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  • 高効率化による損失電力の低減により自己発熱による温度上昇を抑制。
  • 高温環境下においてもより大きな電力を供給することが可能となる。

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こちらも、同様の仕様におけるVicor社のPI3545-00-LGIZと他社製レギュレーターの効率を比較したグラフである。電圧が高くなるに従って、効率に開きが出ている。

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動画では、出力電圧に応じた評価ボードを使用して、電流の測定を行なっている。評価ボードは、PI345xシリーズの評価ボードを使用しており、DC48Vの電圧を入れて、5Vを出力している。電流測定には、入力電流は10mΩのシャント抵抗の両端電圧、出力電流は1mΩのシャント抵抗の両端電圧を測定し、電流を算出している。

図Cool-Powerシリーズの評価ボード

図実験配線

図実験環境

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今後も、供給電力の大型化のニーズが増えていくことは間違いない。そして、基板上の電源は低電圧大電流化が進むことだろう。その時の要件に応えられる電源を適切に選択していくことは、コンピューティングやオートモーティブ以外のマーケットにも求められてくるコモンセンスとなる。モジュール化により、電源関連のエンジニアが減少している昨今、全ての機器に使われている電源を改めて理解することは、今後も重要になってくるだろう。

最後に、DC48Vの電源仕様があれば、Vicor社のレギュレーターを思い出して欲しい。