アルテラSoCをさらに使いやすく国産SOMと国産RTOSが強力タッグ

プロセッサやメモリなど最小限の機能を搭載した既製のモジュール基板「SOM」(システム・オン・モジュール)を使ってユーザーシステムの開発工数を削減しようという動きが産業分野で活発になってきた。浜松の株式会社アルファプロジェクトはアルテラSoCを搭載したSOMを開発。μITRON 4.0に準拠したイー・フォース株式会社のμC3もサポートされる。両社の取り組みやソリューションの特徴を聞いた。

メインイメージ
集合写真(左より)
株式会社アルファプロジェクト 技術部 リーダー 菅原 大幸(ひろゆき)氏
株式会社アルティマ 第1統括部 応用技術2部 リーダー 須山 敏行 氏
日本アルテラ株式会社 マーケティング部 プロダクト・マーケティング・マネージャ 小山 崇之 氏
イー・フォース 株式会社 セールスグループ セールスマネージャー 野田 周作 氏
株式会社アルファプロジェクト 営業部 部長 小野田 倍巳(ますみ)氏
イー・フォース 株式会社 開発部 技術士(情報工学部門) 横田 敬久 氏

プロセッサとメモリを搭載したSOM。ユーザーシステムの開発工数を削減

ー 今日は「アルテラSoC」が載った「SOM」を紹介してもらえるとのことですが、まず「SOM」について教えてください。

小山(日本アルテラ):「SOM」はシステム・オン・モジュール(System on Module)の略で、「COM」(Computer on Module)と呼ぶ人もいますが、プロセッサやDDRメモリなど必要最小限の機能を搭載した小型基板を指す言葉です。組み込みの世界だと「COM Express」とか「SMARC」とか「Qseven」といったフォームファクターの基板がありますが、それらがSOMあるいはCOMに該当します。I/Oやアプリケーション固有機能は大きめのマザーボードに搭載しておいて、そこに既製のSOM基板を組み合わせてシステムを構築しようという考え方で、プロセッサ周りの設計が不要になることで開発期間を短縮できて、そのぶんの開発リソースを本来の付加価値に振り分けられるとして、SOMを活用しようというトレンドがワールドワイドで起きています。

ー いわゆるSBC(シングル・ボード・コンピュータ)とは何が違うのでしょう。

小山:厳密な定義はありませんのでお互いに重複する部分はあるとは思うんですが、アプリケーションに必要な機能が載って完結しているのがSBCで、極端に言えばプロセッサとメモリだけで構成されているのがSOM、というイメージですね。アルテラではARM® Cortex®-A9 MPCoreプロセッサにFPGAを組み合わせた「アルテラSoC」を2012年12月から提供していますが、既製のボードがあればそのまま量産に使いたいというお客様が少なからずいらっしゃるということで、パートナーさんと協力しながらアルテラSoCが載ったSOMを広げていきたいと考えていました。これまで海外製のSOMはあったのですが、今回アルファプロジェクトさんがSOMを製品化してくれて、さらにイー・フォースさんが「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」というμITRONベースのRTOSを載せてくれたことで、APSを通じて皆さんにぜひご紹介したいなというのが今日の主旨です。

小野田(アルファプロジェクト):浜松に本社のあるアルファプロジェクトで営業を担当している小野田です。アルファプロジェクトは、さまざまなCPUボードの開発や、お客様のハードウェアおよびソフトウェアの受託開発を主な業務としていますが、今回アルテラSoCが載った「SA-Cy500S」(図1)というSOMを製品化しましたのでお持ちしました。

図1

図1:アルテラSoCが載ったアルファプロジェクト製「SA-Cy500S」。

80x60mmにアルテラSoCを搭載。量産にもそのまま対応可能

ー さっそく説明をお願いします。

菅原(アルファプロジェクト):アルファプロジェクトの菅原です。「SA-Cy500S」には、シングルコア品の「Cyclone® V SoC」と512MBのDDR3メモリのほかに、USBコネクタやGbit Ethernetなどの最小限のI/O機能が載っています。お客様が独自に拡張できるように、100本ほどのFPGA信号を裏面の160ピンコネクタに引き出してあります。また、カメラやWi-Fiなどアルファプロジェクト独自の拡張もオプションで用意しています。ボードサイズはさまざまなシステムに組み込めるように80x60mmとかなり小型に作りました。DDR3周りやGbit Ethernet周りは基板設計でも苦労するところだと思いますが、そこはアルファプロジェクトがきっちりと設計していますので、お客様は付加価値を高めるアプリケーション部分に注力できるのではないかと考えています。

須山(アルティマ):やはり日本のお客様は日本のベンダーさんの製品でないと技術サポートの面で心配されるケースが多くて、海外製のSOMはご紹介しづらかったのが正直なところなんですが、アルファプロジェクトさんに開発していただいて、しかも国産のμC3も動くということで、お客様に安心してSOMをご紹介できるようになったと感じます。

小野田:現在はシングルコア品を載せていますが、お客様からご要望があれば、Cyclone V SoCファミリのピン互換の範囲で、デュアルコア品やロジックエレメントの大きな品種に変更も可能です。

ー アルテラSoCの評価ボードとして、すでにマクニカ MpressionのHelio(ヘリオ)ボードなどがありますね。

小山:アルテラの評価キットやMpressionのHelioってあくまでも評価用なんですね。これらのボードを量産にそのまま使えないかっていうお客様もいらっしゃるんですけど、量産レベルでの保証や技術サポートはしていません。その点、SOMはアルファプロジェクトのようなベンダーさんが保証してくれますから、そのまま量産に持っていけますよ、といった点がいちばんの違いです。

RTOSニーズに応えてμC3をサポート。μITRON 4.0仕様で産業用に最適

ー この「SA-Cy500S」ではμC3がサポートされているそうですね。

小野田:Linuxももちろん動きますが、やはり産業系のお客様は技術サポートを含めてしっかりしたベンダーの製品を求められますし、μITRON系のRTOSではμC3がいちばんお客様にご安心いただけるのではないかなと考えて、今回イー・フォースさんに対応をお願いした次第です。

野田(イー・フォース):μC3は、2008年にARM Cortex-Mに対応したμC3/Compactが最初に製品化され、今回アルテラSoCに対応したμC3/Standardは、2010年にARMのCortex-Aに対応しました。μC3はμITRON準拠というだけでなく、高い割り込み応答性能と、2013年には、アルテラSoCに搭載されているようなマルチコアにも正式に対応し、より使いやすく信頼性の高いカーネルとしてリリースしています。アルテラSoCはシングルコア品とデュアルコア品があってローエンドからハイエンドまでカバーできて、しかもアルテラの技術サポートは半導体ベンダーの中では飛び抜けているなと感じるぐらいにしっかりしています。お客様のニーズだけではなくイー・フォースの戦略としても重要と考えて、アルテラSoCへの対応を進めてきました。

横田(イー・フォース):アルテラSoC用のμC3のカーネル本体はARM Cortex-A9用と共通のものですが、スタートアップなどの細かいところでチューニングをしたり、他社のSoCとは違ってアルテラSoCは産業分野でニーズの強いネットワークのジャンボフレームやメモリのECC(エラー検出と訂正)機能に対応できるので、それらもサポートしています。なお、アルテラの技術サポートは、野田も言ったように、すごく応対が良いというのは私も感じています。

図2

図2:カーネル、デバイス、TCP/IPの初期設定を視覚的に行えるμC3/Configurator。

菅原:アルテラの技術サポートの良さは私たちも同感で、これ答えてくれるかなぁ、というような質問を投げてもすぐに答えが返ってきますので、非常に助かっています。

小山:ここ、太字で書いておいてください!(笑)

ー RTOSに対するニーズは強いのでしょうか?

須山:ARM Cortex-A9コアということもあり、アルテラSoCが出た当初は、RTOSにどれぐらいのニーズがあるか疑問だったんですが、発売から3年を経過してやはり産業機器メーカーを中心にRTOSのニーズは非常に高いものがあって、とくに国内ではなじみのあるμITRON系を使いたいというお客様はかなりいらっしゃいます。

小山:スタートはやはりLinuxだろうということで、RocketBoard.orgというコミュニティサイトでは技術情報やソフトウェアなどが提供されています。実際にアクセス数も多いようで、評価はLinuxでもいいんですが、量産となると技術サポートがしっかりしたOSを使いたい、というお客様がやはり大多数なんですね。

アルテラSoCの魅力をSOMで訴求。顧客価値の向上を図る

ー 「SA-Cy500S」はどういったアプリケーションに活用されることを想定しているのですか?

菅原:画像処理や信号処理といったアプリケーションが主体になるとは思いますが、FPGAを搭載しているアルテラSoCのフレキシビリティを考えると、分野を問わず何にでも活用していただくのがいいのではないかと考えています。開発を進めたいというお客様向けのスタートアップガイドを用意しており、今後はその先のドキュメントも順次揃えていく予定です。

小山:アルテラSoCの中のARM Cortex-A9が動いたあとはアルテラやアルティマの出番だろうと思っており、トレーニングの実施やオンラインリソースをお客様にご紹介できます。RTOS部分についてはイー・フォースさんに担当していただく流れです。

野田:μC3でいうと、とくにマルチコアに関して、どうやって開発するの?といったお問い合わせが多いので、イー・フォースとしてもマルチコア対応RTOSに関するセミナーや技術資料を通じてお客様に理解を深めていただきたいなと思っています。

ー これからの取り組みや展望を最後にお願いします。

小野田:アルテラSoCを搭載したアルファプロジェクトの「SA-Cy500S」をいろいろな用途で使っていただきたいと思っていますし、プロセッサ周りの設計が不要になるというSOMの特徴を生かして、そのぶんをお客様の付加価値開発に注力していただければ嬉しく思います。オプション機能の拡充やカスタマイズにも対応しながら、お客様にとって使いやすいプラットフォームの提供にこれからも努めていきます。

野田:イー・フォースのμC3は最初からAMP(非対称マルチプロセッシング)に対応していますので、複数の異なるタスクを別々のコアに振り分け、なおかつリアルタイム性を確保したいといった組込系ならではの使い方で特徴を発揮できると思っています。また、FAやIoTといったアプリケーションごとにパッケージを展開することも考えていますし、TCP/IPスタックである「μNet3(マイクロ・ネット・キューブ)」で産業用Ethernetのプロトコルもサポートしていく予定です。

横田:アルテラSoC向けの今後の対応としては、プロセッサからFPGAを書き換えるコンフィギュレーション機能やダイナミック・クロック・ゲーティング機能もμC3に取り入れていくほか、まだ構想段階ですが、AMPで動かしたLinuxとの間でメッセージ通信機能なども考えています。

須山:代理店の立場としては、優れたデバイスがあるだけでは売れない時代になっていて、付加価値をどう提供するかが重要です。アルファプロジェクトさんとイー・フォースさんでSOMのソリューションを用意していただいたということで、品質に対する担保もありますし、なによりも国産の安心感がありますので、お客様に積極的にご紹介していきます。

小山:SOMは、アルファプロジェクトさん以外のベンダーからも提供されていますので、それぞれでプロモーションしながら、お客様の開発工数を削減できるSOMのメリットを訴求していきます。また、よく訊かれるのがインテルとの関係で、ご存知のように2015年12月にインテルの買収手続きが完了してアルテラはその傘下に入りました。アルテラはアルテラSoCファミリとして「Arria® 10 SoC」やハイエンドの「Stratix® 10 SoC」の開発を進めていますが、将来的にはインテル・アーキテクチャをなんらかの形で取り込んでいくことになるかと思います。ARM+FPGAに加えてx86+FPGAのようなSoCを通じてお客様の選択肢を増やしていきますので、これからの新しい可能性にも是非注目していてください。

APS EYE'S

性能は落とさずコンパクト化を実現する。組み込みシステムでは常にある要求だ。SoC、SOM、RTOS、どれが欠けても成立しない3要素を見事にプラットフォーム化。ユーザのニーズにあわせて、変幻自在に応えていくだろう。