AtmelからCortex-M4とCortex-A5が登場。ローパワーとハイパフォーマンスを追求

ARMベースのマイコンおよびマイクロプロセッサを10年以上にわたって展開してきたAtmel。ARM7TDMIベースの「SAM7」ファミリ、ARM Cortex-M3ベースの「SAM3」ファミリ、およびARM926EJベースの「SAM9」ファミリで構成されるラインアップに、ローパワーを追求したARM Cortex-M4ベースの「SAM4」ファミリと、ハイパフォーマンスをローパワーで実現したARM Cortex-A5ベースの「SAMA5」ファミリを新たに追加した。バッテリ駆動の組み込み機器を筆頭とする幅広いアプリケーションに最適な、ふたつの新ファミリを紹介する。

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徹底的にローパワーを追求した「SAM4L」

ARM Cortex-M4プロセッサを搭載した「SAM4L」シリーズは、バッテリ駆動の電子機器の増加を踏まえて、徹底したローパワー化を追求したマイコンだ。その特徴は、「90μA/MHz」、「1.5μs」、そして「28 CoreMark/mA」という三つの数値に集約されていると、シニアフィールドアプリケーションエンジニアのガン ワン氏は言う。

最初の「90μA/MHz」は、通常動作モード(「RUNモード」)における消費電流を表した指標で、小さいほどエネルギーあたりのパフォーマンスに優れていることを示している。「SAM4L」が達成した「90μA/MHz」は業界トップクラスの小ささであり、ローパワーを謳う他社のマイコンと比べても群を抜いた値だ。しかも、内部メモリやレジスタの内容を保持する「WAITモード」および「RETENTIONモード」での消費電流は、それぞれ3μAまたは1.5μAにまで下がる。さらに、内部メモリや主要ロジックのパワーを遮断する「BACKUP」モードでの消費電流はわずか0.5μAである。

次の「1.5μs」は、「WAITモード」あるいは「RETENTIONモード」から「RUNモード」への復帰に要する時間を表した数値だ。復帰時間が短いため、プロセッサ処理を必要としない時間は「WAITモード」または「RETENTIONモード」に設定しておき、必要なときだけ「RUNモード」に切り替えることで、全体の消費電力を最低限に抑えられる。他社のARM Cortex-M4ベースマイコンはいずれも起動に数μsから数十μsを要するなど動作モードの切り替えが長く、そのたびに無駄な電力を消費してしまう点が指摘されている。

最後の数値である「28 CoreMark/mA」は、消費電力あたりの性能ベンチマークを表した指標だ。エネルギー効率がもっとも高いとされるARM Cortex-M0+プロセッサにも匹敵する数値を実現しており、ARM Cortex-M4ベースのマイコンとしては他社の追随を許さないレベルにあるといえる。

評価ボードで消費電力をリアルタイムに確認

これら三つの数値に代表されるように「SAM4L」が優れたローパワー化を実現できた背景には、Atmelの代名詞のひとつでもある「AVR」マイコンで培ってきた「picoPower®」テクノロジーによるところが大きい。「Atmelはおよそ10年間にわたって、低リークな半導体プロセスや独自の設計手法を開発し、picoPower®テクノロジーとしてローパワー化の実現に磨きをかけてきました。SAM4Lにはそれらの成果が存分に反映されています」とガン氏は述べる。

ARM Cortex-M4プロセッサコアをスリープさせておき、内蔵A/Dコンバータの入力が設定したしきい値を超えたときにARM Cortex-M4コアを起動させる、「SleepWalking™」テクノロジーなども搭載した。

「SAM4L」ファミリには同社の定番となっている静電容量式のタッチコントローラが全品種に搭載されるほか、品種によって、暗号化エンジン、LCDコントローラ、USBコントローラなどが搭載される。

評価キット「SAM4L-EK」も提供する。「SAM4Lの消費電力の推移や動作モードをリアルタイムでサブディスプレイに表示する画期的な評価ボードです。動作に応じて消費電力の変化を直接把握できるため、お客様からはとても高い評価を得ています」と、特約店支援グループでグループマネージャーをつとめる柏木 悟氏は訴求する。なお「SAM4L」ファミリはすでに量産出荷中である。

高性能と低消費電力を両立した「SAMA5D3」

続いて、シングルコアのARM Cortex-A5プロセッサを搭載した「SAMA5D3」ファミリを紹介しよう。「SAMA5D3」ファミリに搭載されるARM Cortex-A5プロセッサは、消費電力あたりの演算性能の向上を狙って、ARMが開発したプロセッサコアだ。

実際にSAMA5D3のパフォーマンスは動作周波数が536MHzでは850DMIPSを達成しており、「ARM926EJプロセッサを搭載した当社のSAM9ファミリに比べて、およそ2倍の性能に匹敵します」とガン氏は説明する。一方、「SAMA5D3」の消費電力は536MHz動作時においても200mW以下と低く、ローパワーモードではわずか0.5mW以下である。ハイパフォーマンスとローパワーの両立が図られていることが判る。

製品の位置付けについて柏木氏は、「SAMA5D3ファミリは、ARM Cortex-M系のマイコンでは性能が足りないものの、市販のデュアルコアプロセッサほどのパフォーマンスは要らない、といったアプリケーションに最適なマイクロプロセッサです」と説明し、ユーザーが必要とする性能や機能に応じて「SAMA5D3」ファミリを適材適所で提案していきたい考えだ。

ペリフェラルとしては、汎用的な用途にも広く適用できるように、Gbit Ethernet、CAN、暗号化エンジン、セキュアブート、LCDコントローラ、USBインタフェース、イメージセンサー・インタフェース、抵抗膜式タッチインタフェースなどが搭載される。

すでにデバイスのサンプル、評価ボード、Linux、Android 4.0などの提供が始まっているほか、米Timesys社からユーザーインタフェースライブラリも提供される予定だ。

製品ライフタイムをサポートする長期供給

Atmelがリリースした「SAM4L」ファミリと「SAMA5D3」ファミリは、性能レンジや最適なアプリケーションはそれぞれ異なるものの、いずれもエネルギーあたりのパフォーマンスを追求した製品といえる。

このうち「SAM4L」ファミリは、バッテリ動作のインテリジェントリモコン、ウェアラブルセンサーを含む携帯型メディカル機器、ハンディターミナル、HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)、およびセンサーネットワークに最適なマイコンだ。

一方の「SAMA5D3」ファミリは、LinuxやITRONなどのOSの搭載を前提としたマイクロプロセッサで、産業機器、メディカル機器、高機能コンシューマ機器などに最適だろう。

Atmelは従来から部品の長期供給に努めてきたが、「SAM4L」ファミリと「SAMA5D3」ファミリともにそれぞれ製品リリースから12年間にわたる供給が約束されており、製品ライフの長いアプリケーションでも安心して使える点も大きなメリットである。「Atmelはこれからもさらなるローパワー化を追求していきます。ぜひ期待してください」と柏木氏が述べるように、同社はこれからも顧客のローパワーニーズに積極的に応えていく考えだ。