AtmelがCortex™-M系マイコンファミリを拡充。開発環境Studio 6を通じて使いやすさを追求。

8ビットのAVRマイコンで有名なAtmelは、ここ10年ほど、ARM®ベースのマイコン製品およびマイクロプロセッサ製品の拡充を進めている。AVRシリーズで培ったローパワー技術などを盛り込みながら、ローエンドからハイパフォーマンスまでバランス良く品種を展開しているのが特長だ。2013年に同社が新たに投入したのが、ARM Cortex-M0+プロセッサを搭載する「SAM D20」と、ARM Cortex-M4Fプロセッサを搭載する「SAM4E」である。センサーアプリケーションやインダストリアルアプリケーションに最適なこれら新製品の概要を紹介しよう。

EEPROMベンダーからマイコンベンダーへ

白物家電をはじめとしてさまざまな組み込み用途に用いられているAtmelのマイコン。有名な「AVR」マイコンのほか、同アーキテクチャをベースにしたタッチコントローラマイコン「maxTouch」シリーズを含めると、同社のマイコン業界でのシェアはワールドワイドで3位ないし4位のポジションにあるといわれている(同社調べ)。

マイコンベンダーとしての地位を固めつつある同社が最近力を入れているのが、ARMベースマイコンのポートフォリオの拡充だ。「Smart ARM-based Microcontrollers」を略した「SAM」というブランドで、ARM Cortex-M3プロセッサを搭載した「SAM3」ファミリやARM Cortex-M4プロセッサを搭載した「SAM4」ファミリを展開するとともに、ARM926EJを搭載した「SAM9」ファミリなどの上位製品も積極的に提供している。

Cortex-M0+搭載のSAM D20ファミリ

Atmelが2013年6月に新たにラインアップに追加したのが、ARM Cortex-M0+プロセッサを搭載したローエンド向けの「SAM D20」ファミリである。最高動作周波数は48MHzで、「CoreMark」ベンチマーク値は最大2.14である。「AVRマイコンで培った内部アーキテクチャや設計しやすさを継承したマイコンです」と、同社シニアフィールドアプリケーションエンジニアのガン ワン氏は述べる。

たとえばローパワー技術もそのひとつだ。ARM Cortex-M0+プロセッサはもともとローパワーを謳っているが、さらに内部動作を可能な限り停止してパワーを抑えるAtmel独自の技術「SleepWalking™」などを組み合わせて、業界トップレベルの低消費電力動作を実現した。消費電流は通常の動作モードでは150μA/MHzと小さく、タッチコントローラの動作を維持するスリープモードでは10μA以下、さらにRTCと内蔵RAMの状態を保持するモードでは2μAにまで下がる。いずれも競合製品に比べて優れた数値だ。なお、動作電圧は1.8Vから3.3V±10%である。

「SAM D20」の特徴的な機能のひとつが「SERCOM」と呼ぶ「シリアル・コミュニケーション・モジュール」だ。内蔵のシリアルモジュールを、最高400kHzのI2Cインタフェース、最高24MbpsのSPI、または最高24MbpsのUSARTのいずれかに設定できる。

また、AVRマイコンでおなじみとなっている「ペリフェラル・イベント・システム」と呼ぶ独自機能も搭載した。内蔵のGPIO、タイマー/カウンター、非同期タイマー(RTC)、アナログコンパレータ、A/DコンバータおよびD/Aコンバータ、タッチコントローラ間で、マイコンコアを介さずにデータをやりとりできるのが特徴だ。コアの処理をオフロードできるほか、消費電力の低減や転送に伴うレイテンシの最小化が図れる。

このほか、静電容量式タッチコントローラエンジン、12ビット/350kSPSのA/Dコンバータおよび10ビット/350kSPSのD/Aコンバータ、16ビット×2または32ビット×1に構成を変えられるタイマー/カウンタなどを内蔵する。A/Dコンバータは上位品種の「SAM D20J」の場合で20チャネルと多いので、センサーコントローラとしても最適といえるだろう。なお、こうしたペリフェラルはAVRのペリフェラルアーキテクチャを踏襲しているため、AVRユーザーが「SAM D20」に乗り換えた場合でも使いやすく感じられるはずだ。

評価ボードとしては「SAM D20 Xplained Pro」キットが用意される(39ドル)。デバッガ・プログラマを搭載し、USBパワーで動作するので「SAM D20」の機能を手軽に試すことができる。また、アプリケーションノートやデザインガイドなどのドキュメント類ももちろん提供される。

Cortex-M4F搭載のSAM4Eファミリ

AtmelはARM Cortex-M4Fプロセッサを搭載した「SAM4E」ファミリもラインアップに追加した。浮動小数点ユニットを持つARM Cortex-M4Fプロセッサを同社製品として初めて採用するとともに、Ethernetをはじめとするコネクティビティ機能を充実させた点が特徴である。

インダストリアル、M2M(Machine-to-Machine)、ビルマネージメントシステムやホームマネージメントシステム、スマートエネルギーなど、高度な数値演算処理機能とコネクティビティ機能の両方が求められる分野を対象に開発されたマイコンで、コア周波数は最高120MHzだが、より高い周波数の品種も検討中である。「SAM3シリーズよりも高い性能を必要とするお客様から引き合いが来ています」とガン氏は説明する。

コネクティビティとしては、IEEE 1588に対応した10/100M Ethernet×1のほか、CAN×2、USART×4、USB Full Speed×1、最高33MbpsのSPI×3、I2C×2の各インタフェースが搭載される。暗号化AESエンジンも組み込まれているため、セキュアなリンクを確立できる。

センサーアプリケーションを想定して、12ビット/1MSPSのA/Dコンバータを2系統内蔵した。入力マルチプレクサの働きにより最大24チャネルをサンプリング可能だ。また、デジタル平均化機能を使うと、サンプリングレートは下がるが、実効分解能を最大16ビットに高められるため、入力信号のダイナミックレンジが広いアプリケーションにも適当だ。

統合環境Studio 6が使いやすさを保証

Atmelは「SAM D20」や「SAM4E」を含むすべてのマイコン製品を対象に「Atmel Studio 6」という統合開発環境を無償で提供している。各ペリフェラルに対応したドライバのライブラリ「Atmel Software Framework(ASF)」をツリーから簡単に参照できるなど、使い勝手に優れているのが特徴だ。「Studio 6のダウンロード数はリリースから半年で25万回を超え、ユーザーからも高い評価を得ています」と、同社グループマネージャーの帝理モロ氏は言う。8ビットのAVRマイコンから32ビットのSAMシリーズまで統一した環境でソフトウェアを開発できるのも同社マイコンポートフォリオの訴求点のひとつだろう。

実際に「マイコン業界でトップグループを走っているという安心感が当社の魅力であり、製品選定時の検討対象からは外せないというお客様も少なくありません」と帝理氏は述べる。今後もこうした製品ラインアップの拡充によって顧客のニーズに応えていく考えだ。