Cortex-M3コア搭載の「Stellaris」マイコン。

アナログからデジタルまで幅広い製品ポートフォリオを持つテキサス・インスツルメンツが新たに展開するマイコンが、Cortex-M3コアを搭載した「Stellaris」(ステラリス)である。同社ならではの強力なサポートネットワークを武器にしながら、他社を上回る豊富な品種展開と積極的な製品開発によって、多様化するユーザーニーズに応える。

高性能やネットワーク機能が特徴のCortex-M3搭載マイコンを新たに投入。

テキサス・インスツルメンツ(以下TI)は2009年5月にARM Cortex-M3コアを搭載した「Stellaris」(ステラリス)と呼ぶ新たなマイコンファミリをラインアップに加えました。この概要について教えてください。

木下:TIではこれまで、超低消費電力を特長とする16ビットのMSP430シリーズや、リアルタイム性に優れた32ビットのC2000シリーズなどをラインアップしてきました。それぞれお客様から高い評価をいただいてきましたが、より汎用的なマイコンをご希望されるお客様の声にお応えして、昨年からラインナップに加えたものです。Stellarisは、Cortex-M3コアを世界で初めて製品化したマイコン・ファミリとして知られ、欧米を中心に幅広い採用実績を誇っています。

TIというとDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)やアナログ半導体のイメージが強いように感じます。

木下:たしかにそうかもしれません。ただTIでは、1993年というかなり初期の頃からARM社のライセンスを受けていて、ARM7、ARM9、ARM11、Cortex-R4、Cortex-A8コアなどを搭載した数多くの製品を展開してきた歴史を持っています。ARM社は2009年6月に累計出荷個数が150億個を超えたと発表していますが、TIではすでに50億個以上のARM搭載マイコンを出荷していますので、実は全世界のARM搭載マイコンのうち1/3以上が当社製品なんです。

そのような実績があるのですね。ところで、Stellarisファミリにはどのような特徴があるのでしょうか?

木下:まず、性能に優れているという点が挙げられるでしょう。内部フラッシュメモリへのアクセススピードが高速で、Cortex-M3コアの特徴であるThumb-2命令の性能や割り込み性能を最大限に引き出すように工夫されています。また、コアの最高動作周波数も業界トップクラスとなる100MHzを達成しています。もうひとつはネットワーク機能で、いくつかの品種にはイーサネット機能を内蔵していますが、競合製品がMACまでしか集積していないのに対して、StellarisではPHY(物理層)も集積しています。実装面積の小型化や電源要件の緩和が図れます。

現時点でどのくらいの製品を展開しているのですか?

木下:2010年7月現在で167品種を取り揃えています。先ほど述べたイーサネットのほかに、「On-The-Go」を含むUSB、CAN、IEEE 1588 PTPをサポートする各製品と、これらインタフェースを複数搭載した製品があります。これまで積極的に品種を増やしてきた結果、他社ではみられないこのような多品種を実現しています。

全国規模のサポート体制を展開。さらなる品種展開でニーズに応える。

マイコン製品は技術サポートも重要ですね。

木下:もちろんです。当社では昨年から全国10か所に営業所を展開しています。具体的には東京のほかに大阪、名古屋、さいたま、横浜、京都、仙台、松本、福岡、金沢、広島の各拠点です。現在、それぞれの拠点にマイコン製品のサポートエンジニアスタッフを配置し、お客様のできるだけ近くでStellarisのサポートができるような体制を敷いています。実際にあるお客様からは、営業所にサポートエンジニアがいてくれるのでとても安心できる、といった声を頂戴しています。当然ですが日本TI本社にはStellaris専任のエンジニアもいますのでバックアップも万全です。また、お客様の事業所に伺って半日ほどのワークショップも開催しています。先日も東北地方のお客様のところに伺ったばかりですし、あるお客様のところでは3名様のご出席のところに私どもが10人くらいでお邪魔してしまったこともあります(笑)。いずれにしても全国どこへでもStellarisの説明に出向きますので、お気軽にご用命いただければと思います。

評価ボードなどの状況はいかがでしょう。

木下:基板やケーブル類など必要なものすべてをパッケージングした「評価キット」を各ファミリごとに用意しています。「10分で評価が開始できる」ほど簡単ですので、ぜひ使ってみてください。基板のCAD情報なども公開していますから、製品設計の参考にもなると思います。また、大型液晶パネルやモーターを同梱した「リファレンスキット」も用意しています。こちらはお客様の製品にそのまま組込んでいただけるものです。このほか、USBやグラフィックなどのライブラリをまとめた「StellarisWare」というソフトウェアライブラリを無償で提供しています。

なるほど、お話を伺っているとすぐにでも試作機を作れそうな気がしてきました。さて最初の製品投入からすでに一年以上が経過し、これからの製品展開にはTIの真価が発揮されると思いますが、どのような計画で進める予定なのでしょうか。

木下:お客様からさまざまなご要望をいただいていますので、フラッシュメモリ容量の増大やアナログ回路部分の精度向上を図るなどして、2010年末までに200品種程度にまで拡大を図ります。2011年以降にはインダストリアルイーサネットの集積やフラッシュメモリ容量のさらなる倍増を進めるとともに、MSP430シリーズで培った超低消費電力の技術やC2000で培った高速信号処理技術などをStellarisにも適用していく予定です。TIは購入規模の大きなビッグカスタマーしか相手にしないんだよね、といったことをよく言われるのですが、そのようなことはまったくなく、あらゆるお客様からニーズを幅広くお聞きしながら社内の開発スピードを徹底して速めて、お客様が必要とするStellaris製品をこれからもどんどん作っていく予定です。ですから、「欲しい機能があれば何でも言ってください」ということをぜひ申し添えておきたいと思います。

国内での採用実績はありますか?

木下:すでにいくつかの案件でご採用が決まっています。具体的には、ネットワークルーター、AV機器に搭載するネットワークボード、ゲーム機器などです。最近では、日本の半導体ベンダーさんもCortex-M3コアを搭載したマイコン製品を続々とラインアップしていらっしゃいますが、TIは世界最大規模のサプライヤとして、たとえばグローバル展開しているお客様が日本で設計した製品を中国で生産する場合でも、それぞれの国のTIが全面的にサポートします。この点も当社の強みのひとつではないかと考えています。

最後に今後の意気込みをお聞かせください。

木下: TIでは、Stellarisのほかに、16ビットの超低消費電力マイコンMSP430シリーズは、32ビットハイスピードマイコンC2000シリーズなど、用途に応じた多くのマイコン製品を展開しています。これまでは「DSPのTI」あるいは「アナログのTI」として当社をご評価いただいていたかと思いますが、今後は「マイコンのTI」としても認知いただけるように、お客様のニーズに応えながら、優れた製品を提供していきたいと考えています。