最新複合機「TASKalfa」に東芝のM360/M330を採用。

京セラミタ株式会社(以下、京セラミタ)は、複合機、プリンター、ソフトウェアなどを製造・販売している事務機メーカである。今回の事例は、最新複合機であるTASKalfa(タスクアルファ)に、東芝のARMマイコンTX03シリーズ(M360/M330グループ)が採用された経緯をはじめ、タイマー数の多さやコード効率の高さ、良好な処理速度など、TX03シリーズがもたらしたメリットを聞いた。

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必要な機能を絞り込むことで低コストを実現。

京セラミタは、複合機のTASKalfa(タスクアルファ)シリーズ、プリンター/プリンター複合機のECOSYS(エコシス)シリーズなどを開発/提供している。さらにサービスとして、MDS(Managed Document Service)なども用意している。

TASKalfaは、「すべての業務(タスク)を効率化するために、いちばん(アルファ)役立つ複合機」という意味を持たせているものだ。「現在、複合機はダウンサイジングと分散化しながら、管理は集中的に行いたいというニーズとともに、なるべく低価格に、という方向に進んでいます」(京セラミタ 川崎氏)。「ネットワークのサーバーとして動作させたり、ユーザーの業務フローを効率化するためのソリューション・プログラムを動作させるなど、各社が独自の特長を打ち出しています」(京セラミタ 向井氏)という。

このような市場動向を受け京セラミタでは、複合機とプリンターの両製品をラインアップし、全世界に広がる販売会社を通じて製品を提供し、お客様の多様なニーズに対応できる様々なドキュメント・ソリューションの提案を行っている。

京セラミタの最新複合機が、A3カラー複合機の「TASKalfa255c/205c」とA3モノクロ複合機の「TASKalfa305/255」である。それぞれの出力スピードは、TASKalfa255cが毎分25枚(A4ヨコ)、TASKalfa205cが毎分20枚(A4ヨコ)、TASKalfa305が毎分30枚(A4ヨコ)、TASKalfa255が毎分25枚(A4ヨコ)である。これらに東芝のTX03シリーズが採用された。

「最新機種は、5~20名程度の小規模オフィス(フロア)をターゲットにしており、複合機の多機能化が進む中、基本機能を重視したシンプルで使いやすい低価格複合機の提供を実現しています」(川崎氏)。低価格モデルにかかわらず、コピー、スキャン、プリント、ネットワークの各機能、原稿送り装置、両面印刷機能を標準装備し、操作性については、見やすい大型アイコンの採用や握りやすいグリップ式の給紙カセットを搭載すると共に、消耗品の交換などのユーザビリティーを追求した設計となっている。

ネットワークをONにしたままスリープ時1Wを実現。

「TASKalfa255c/205c」および「TASKalfa305/255」は、エコシスコンセプトに基づく京セラミタ独自の長寿命技術を導入し、省スペース、直感的な操作、イージー・セットアップ、省エネ、業界トップクラスの静音性などさまざまな特長を持つ。「このエコシスコンセプトとは、特に画像系の心臓部にあたる感光ドラムや現像器といった消耗部品を最大限まで長寿命化し、合わせて周辺ユニットや部品などの長寿命化を進め、機械本体の寿命に至るまでほとんどの部品交換を不要とするものです。条件にもよりますがカラー複合機で20万枚、モノクロ複合機で30万枚という極めて高い耐久性を実現しています」(川崎氏)。

省スペースの面でも、カラー複合機、モノクロ複合機ともに590mm×590mmであり、国内で発売されているレーザー方式のA3対応カラー複合機においてクラス最小となる。このサイズは、肘掛け付きのオフィス・チェアと同程度であり、オフィスの限られたスペースやデスクサイドに容易に設置することができる。

直感的な操作は、わかりやすい操作ボタン、大きなアイコンのタッチパネルで実現した。ひとつの画面に一つの操作だけを表示するわかりやすさ、選択したアイコンをハイライト表示するなど、適切な操作をより簡単に行える。さらに、操作がわかりやすくても、トナー交換や用紙の補給などに手間がかかると効率が落ちるため内部をユニット化し、メンテ時間、使えない時間を大幅に短縮している。

「省エネに関しては、新開発ASICを搭載した省エネシステム設計により、ネットワークからのパケット自動応答やユーザ操作に連動した機器ステータス自動通知を実現しながら、スリープ時の消費電力を1W/hに抑えました。また、原稿スキャンの光源やパネルのバックライト光源にLEDランプを採用するなどによって、使用時の消費電力を当社従来機比で約25~35%ダウンしています」(京セラミタ 田端氏)。

静音性においても、従来製品と比べて70%もの騒音低減を図った。「給紙時に発生する動作音を様々な角度で分析しシミュレーションと実験を繰り返し行うなど、静音性の向上にも注力しました。さらに大学との共同研究によって、耳障りな音を低減させながら、快音といわれるレベルになっています」(川崎氏)。

東芝TX03の性能はもちろん、コスト・パフォーマンスが決め手に。

電子写真技術のプリントプロセスは、帯電/露光/現像/転写/定着の各プロセスからなり、複合機では、スキャナー機構、ドラム機構、現像機構、転写機構、定着機構、ポリゴンミラー機構、紙送り機構など様々なモーターが使用され用途に応じて高速・高精度制御が求められる。中でも、レーザー書込みに用いられるポリゴンモーターは、3万rpm以上で0.02%以下の高速・高精度を求められ、4色ドラムを直列に配置したタンデムエンジンのカラー機においては、各色4つのポリゴンモーターのミラー面の位相を制御し、感光ドラムへのレーザー書出しタイミングを合わせる必要がある。

これらのモーターの動作に加え、プロセスの制御に使用する高圧系のPWM(Pulse Width Modulation)制御に数本、内部のシステム・タイマー用に数本のタイマーが必要となる。複合機は先端のメカトロ制御を行っており、その制御には多くのマイコンが関わっている。カラー複合機の「TASKalfa255c/205c」には、用紙搬送制御とプロセス制御用として1個、LSU周りの制御用として1個、帯電から定着までの一連のプロセス周りの入出力制御用として1個、パネル制御に1個、さらに画像処理のプロセッサーに1個など多くのCPUが使われている。モノクロ複合機の「TASKalfa305/255」は、LSU制御用のマイコンが無い以外、カラーと同じである。

東芝のTX03シリーズは、カラー機/モノクロ機の用紙搬送制御用とプロセス制御用にTMPM362F10FG、カラーのポリゴン系のLSU(Laser Scanning Unit)制御にTMPM332FWUGが搭載された。

「従来からメカニカル制御用に採用していたマイコンでは、価格的に折り合いがつきませんでした。東芝のTX03シリーズにした理由は、ずばりコスト・パフォーマンスです。カラー複合機はコード・サイズが大きくなるなど多くのリソースが必要となります。それに見合うROM/RAMサイズとなると、他社製品ではコストの面で妥協しなくてはなりませんでした」(京セラミタ 宮村氏)。コスト的に折り合い、32ビット・クラスのパフォーマンスを得たい。それにマッチしたのがTX03シリーズだったわけだ。

「TX03シリーズの構想段階から東芝からのヒヤリングを受け、複合機/プリンターに必要な機能を搭載していただきました」(宮村氏)。たとえば、多くのモーター制御に活用できるタイマー、さまざまなセンサー入力のためのIO数、ROM/RAMの容量などだ。これらの点が大いに評価された。長寿命設計、カラー複合機のためプログラム容量が大きくなる。そこに東芝ならではの大容量でコストパフォーマンスの良いフラッシュ・メモリであるNANO FLASHTMの搭載も導入の決め手になった。「ARMという世界標準コアに東芝ならではの多彩な周辺IPが搭載されており、ユーザー領域を強化したものでした。複合機/プリンターに最適なマイコンだったのです」(宮村氏)。

他社製品よりコード効率が20~30%も高くて助かった。

TX03シリーズ採用にあたって心配したこととして、ARMの使用経験がなかったこと、マイコンの電気的特性や安全性などが不明だったことがあげられる。ARMの使用経験がなかった点については、東芝のサポートの良さが評価された。「OSは、東芝情報システム(株)から提供されているUDEOS® 4(μITRON)を採用したのですが、サポートが極めて良かったです。さらに3rdParty製のデバッグ・ツールへの質問も、まるで東芝製のように親切丁寧かつ驚くほどスピーディに対応していただき大変助かりました」(京セラミタ 南野氏)。

「セミナーの開催やサンプル・ソフトウェアを提供するなど、いち早く開発環境に慣れていただくためのサポートに尽力しました。もちろん一筋縄ではいかない、いろいろなトラブルがあったことは隠しませんが、すべての面でサポートしていく心構えで臨みました。これはどのお客様でも変わらぬ方針です」(東芝 土居重氏)。

マイコンの電気的特性と安全性については、特にトラブルもなかった。さらに、熱設計についてもスムーズに進んだとのことだ。開発環境のOSはμITRON、言語はC/C++を用いた。プロセス制御部と用紙搬送部はOSを搭載しC++を用い、LSU制御部はOSレスでCを用いたという。

TX03シリーズ採用のメリットとしてコード効率の高さがあった。「開発中は、つい欲張りになり、あれもこれもといろいろな機能を追加することが多いのですが、従来採用していた他社製品よりコード効率が20~30%も高く驚きました」(南野氏)。

安全性確保についても、世界各国の安全規格に適合することはもちろん、当社のPL製品安全基準を設け、安全設計ガイドラインに基づく設計を行い潜在的なリスクを事前に取り除き、検証・評価を開発ステップに取り入れ、当社安全設計委員会による確認を行っており、マイコン自体の外来ノイズ耐量も必要となっている。

最後に東芝の三谷氏は、「ARMは競合他社製品のコアとも差異化できますが、東芝としては京セラミタ様にも使い易いといっていただいたタイマーやNANO FLASHなど数多くの実績ある周辺機能で、他との違いを強化しています。製品の性能、コスト・パフォーマンスの向上はもちろんですが、充実した技術サポートの提供にも注力しています。ARMマイコン陣営の中でも“東芝を選んで良かった”と喜んでいただけるよう、また、さらに発展していくためにも、これらからも生の声をどんどん聞かせていただき、同時にAPS読者の皆様にも届けていきたい」と結んだ。

現在開発中の製品にもTX03シリーズの採用が決定された。東芝のARMマイコンは、今後も京セラミタ製品の競争力向上に貢献していく。