ECHONET Lite™対応機器に東芝のTMPM360/370を採用

近年、家庭内の省エネ意識の高まりから、家電製品全体を集中コントロールすることで省エネを推進する国際標準化推進規格「ECHONET Lite」に注目が集まり、それに対応した製品が登場してきている。東芝ライテックはITアクセスポイントとエネルギー計測ユニットなどECHONET Lite™/ECHONET™に対応した製品をラインアップしている。このエネルギー計測ユニットにARM社 Cortex-M3搭載の東芝 セミコンダクター&ストレージ社マイコン、TX03シリーズが採用された。ここでは、エネルギー計測ユニットの特徴と東芝マイコンTMPM360/370グループ採用のメリットなどを聞いた。

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創エネ、蓄エネ、省エネをコンセプトとした新しい取り組み

HEMS(Home Energy Management System:家庭向けのエネルギー管理システム)は、エアコンや冷蔵庫など比較的電力を消費する白物家電、ソーラー発電機といった再生可能エネルギーや蓄電器システムなどをネットワークで相互に接続することにより、エネルギーの見える化や消費の最適制御を行う仕組みとして注目を集めている。

ちなみにエネルギー管理システムは、家庭向け以外にもビルに向けたBEMS(Building Energy Management System)や工場に向けたFEMS(Factory Energy Management System)などがある。

このHEMSに向けたネットワーク規格の1つにECHONET Liteがある。ECHONET Liteは、創エネ、畜エネ、省エネをコンセプトに、日本の家電メーカー、通信会社、電力会社などが加入するエコーネットコンソーシアムで策定された通信プロトコルだ。従来からあるECHONET規格は、利用頻度の低い機能が多いなど使い勝手が悪くあまり普及しなかった。ECHONET Liteは、ECHONETを基により使いやすく改良されたもので、現在、いくつかのメーカーからECHONET Liteに対応したシステムが提供されはじめてきた。

スマートホームを実現する「フェミニティ」を展開

東芝グループでは、ECHONET/ECHONET Liteプロトコルを採用したスマートホームを実現するためのホームITシステム「フェミニティ」を展開している。有料のクラウドサービスの「フェミニティ倶楽部」に加入することで、外出先から携帯電話やスマートフォンでエアコンや照明の操作、玄関の電気錠の施錠確認、来訪者の画像確認を行うことができる(要オプション)。フェミニティ倶楽部へは、ITアクセスポイントまたはITホームゲートウェイを使用し、ブロードバンドルータを介しインターネットで接続する。

フェミニティの機能は、①見える化、②分かる化、③できる化、に大別できる。

①見える化は、エネルギーの創出と消費を可視化するものだ。「各機器のエネルギーの使用量を見る機能で、太陽光発電を行っているときはその発電量や売電量、蓄電池を備えていれば蓄電量などが一目で分かります」。

②分かる化は、各機器の使用量が時間ごとに分かる機能である。「生活リズムに応じた各家電の使用状況が詳細に分かります。現状では、分岐回路ごとの家電のエネルギー使用量までですが、将来的には、各機器と通信することで個々の機器の使用量が分かるようにまでなります」。

③できる化は、フェミニティ倶楽部を介して携帯電話やスマートフォンからエアコンや照明、給湯器などを遠隔操作できる機能である。「将来的には、分かる化で判明した機器のエネルギー使用状況からその家庭に最適な運転プランを提供できるところまで見据えています」(東芝ライテック 久間氏)。

その中で東芝ライテックでは、ECHONETおよびECHONET Liteに対応したシステムとして、ITアクセスポイントやエネルギー計測ユニットなどをラインアップしている。「ITアクセスポイントは、ホームネットワークの肝になるユニットで、これをベースにさまざまな機器を制御します」(東芝ライテック 高橋氏)という。エネルギー計測ユニットは、分電盤や水道・ガスメータと接続するためのユニットであり、ITアクセスポイントと組みあわせることでフェミニティの中核を担う。

ラインアップとしては、無線通信(Bluetooth®)と有線通信(Ethernet)で大別される。前者はITアクセスポイントとIT電力計ユニットをセットにした「HEMS Aパック01(BTR12-A01)」ならびに、ITアクセスポイントとエネルギー計測ユニットをセットにした「HEMS Bパック01(BTR12-B01)」2つのパックがあり、後者はITアクセスポイントとIT電力計ユニットをセットにした「HEMS Aパック02(BTR12-A02)」が用意されている。

エネルギー計測ユニットにARMコア搭載東芝マイコンを採用

エネルギー計測ユニットは複数の機器を接続できる、いわばハブのようなものだ。最大30回線の分岐ブレーカの電力量(標準で10回線、オプションを使用)、太陽光発電の発電量と売電量(オプションを使用)、ガスや水の使用量(それぞれパルス発信式のメータが必要)などが分かる。このエネルギー計測ユニットにARM社 Cortex-M3搭載の東芝 セミコンダクター&ストレージ社マイコンTMPM370 グループが採用された。

Bluetooth対応版には2つのARMマイコンが採用されている。「エネルギー計測ユニット」のメイン基板のTMPM370グループ(TMPM370FYFG)、もう1つが内蔵している「Bluetoothアダプタ」のTMPM360グループ(TMPM361F10FG)である。このBluetoothアダプタを東芝エアコンの「大清快」、東芝エコキュートの「エスティア」、定置式家庭用燃料電池システムの「エネグーン」、「HA機器対応機器用拡張アダプタ」などに搭載することで、これらさまざまなシステムをBluetoothに対応させることができる。

「TMPM361F10FGは、比較的内蔵メモリ容量が大きいことから、非常に使い勝手の良いマイコンです」(沢井氏)。フラッシュメモリは東芝独自のNANO FLASH™を1Mバイト搭載し、RAMも64Kバイト搭載している。2013年2月現在、TMPM360グループにはRAMが128Kバイト版の製品も用意されている。

システムの発展性を見据えてARMマイコンを採用

「同じARMマイコンならソフトウェアは基本的にバイナリ互換になるため、アダプタの機能追加などシステムを発展しやすくなります」と高橋氏はARMコアの将来性に期待したという。さらに開発環境の充実もある。「ARMマイコンはECOSYSTEMパートナーが多く、OSやツール、ミドルウェアやソフトウェアIPなど多くの選択肢があります」(久間氏)。

試作ボートのドライバ開発やTCP/IPのプロトコルスタックなどの対応といった基本的なサポートはOSメーカーに依頼したという。「こういった対応に加え、組み込みシステムで必須となるTCP/IPプロトコルスタックのIPアドレスが競合したときの処理についても標準品で対応していただきました」(高橋氏)。

開発環境は、ARMマイコン向けのものが多く充実している。「デバッグツールも、いままでは高価なICEが必要でしたが、ARMコアはJTAGポートが用意されており、比較的安価なJTAGデバッガを使用できるのは助かります」(東芝ライテック 井手氏)という。また、海外でのサポートにも期待しているという。「以前の製品の一部は海外生産しており、東芝 セミコンダクター&ストレージ社からのサポートがあり安心感がありました。今後、数が見込めるなら製品の海外生産も見込んでおり、その場合も国内と同じようなサポートを期待しています」(高橋氏)。

今後は、高性能コアへの移行も考えているという。「お客様のご要望によっては、より高性能なCortex-M4へのシフトも考えています」(高橋氏)。「パフォーマンスの点からCortex-M3からCortex-M4へのマイグレーションも増えてきています。特に通信系のセキュリティは、Cortex-M4コアで処理することも多くなっています」(沢井氏)という。

ARMマイコンは製品の選択肢が幅広い

ソフトウェア開発において基本的なIPは外部調達することでTAT短縮を図り、差別化のポイント部分に注力するのが一般的になっている。「東芝 セミコンダクター&ストレージ社は、ソフトウェアIPはサンプルベースのものを提供しており、多くのお客様がそれをベースに改変しています」(沢井氏)。

BluetoothアダプタでBluetoothを処理しているとき、UART部分の通信処理で一時的に負荷が高くなりパケット落ちがおこることがあった。「Bluetoothアダプタのプログラムをすべて外部RAMを参照して動作させていたので、一部のモジュールを内蔵RAMに移行することで、それらの課題を解決しました」(井手氏)という。ここでもTMPM361F10FGのRAM容量の大きさが役立っている。Bluetoothというと近距離通信というイメージが強いが、東芝ライテックで採用したのはBluetooth Class 1という規格であり、出力が100mWで見通し100mまで届くものだ。

現在、ZigBeeも広く採用されているが、東芝ライテックがBluetoothアダプタを開発した当時は、まだZigBeeが一般的ではなかった。さらに井手氏は、「無線LANだと消費電力が大きく、東芝グループとして注力していたのがBluetoothでした」という。ちなみに、Bluetoothアダプタの使用マイコンにはMIPSコアのTX19、CISCのTLCS-900/L1と変化し、最新版にはTMPM360グループが採用された。

「いままでCISCマイコンのインタフェースは独自であり、それぞれのマイコンごとに用意しなければなりませんでした。それに対してARMマイコンは、インタフェースの互換性が高いうえ、製品の選択肢も幅広く、コストも含めシステムに最適なマイコンを選べます」と久間氏はARMマイコン採用のメリットを語る。井手氏は、「ARM Cortex-M3は全世界で活用されており、開発上のノウハウや知識が多くあるという環境の充実性や安心感があります」とのことだ。

東芝グループとして社会インフラ系にも注力

「東芝 セミコンダクター&ストレージ社は、Cortex-M3コアを搭載したマイコンに加え、Cortex-M4やCortex-M0のマイコンもラインアップしており、これら3種類のARMマイコンでお客様のご要望に幅広く応えています。今後もお客様の声を聞きながら、アプリケーションに特化したマイコンをご提供していきます」(沢井氏)。

HEMS、太陽光や蓄電池システムに特化したアプリケーションを担当している東芝マイクロエレクトロニクス 大力氏も、「今後、東芝グループの社会インフラシステム社や電力システム社などと連携してアプリケーションに適したマイコンのラインアップを充実していきます」という。

さらに大力氏は、「ECHONET Lite対応の製品は、東芝グループとして新しい企画を進めており、東芝 セミコンダクター&ストレージ社では、通信モジュールなどのハードウェアばかりでなく、ソフトウェアスタックなども含めた総合的なソリューション提案をしています。スマートハウスというインフラの整備が進む中、具体的なサービスを提供できるよう開発を進めています」という。

最後に沢井氏は、「東芝 セミコンダクター&ストレージ社は、もともとデジタル家電やモータ制御などのアプリケーションに注力してきました。今後は、これに並行して、社会インフラ系のアプリケーションに向けた製品強化を図っていきます。たとえば、スマートメータやその通信部分を担う半導体をスマートメータ部門と共に開発しています。これらの活動を通じて、将来の社会インフラに寄与していきたい」と結んだ。

東芝 セミコンダクター&ストレージ社のソリューションは、東芝ライテック製品をはじめインフラ系の製品開発に大きく貢献している。

  • ※「ECHONET」、「ECHONETLite」はエコーネットコンソーシアムの商標です。
  • ※Bluetoothは、Bluetooth SIG, Inc.の登録商標です。