センサー回路、ブリッジ回路を使いこなす

センサー回路、ブリッジ回路を使いこなすための回路技術

センサーからの出力は非常に微細なものが多く、最近ではマイコンとのI/Fを組み込んだものが多く見られるようになりました。しかし、まだまだ多くのセンサーは、微弱な電圧や電流のものが多く、適切な回路設計を行わないと後段のアンプで増幅することもできませんし、取り出したい信号がノイズに埋もれてしまうなんてことも十分ありえます。

今回は、この微弱なセンサー信号を扱うためのブリッジ回路に関する理解を深め、それを使いこなすために必須な電子回路理論「キルヒホッフの法則」を学んで行きましょう。

キルヒホッフの法則 ー第1法則ー

キルヒホッフの法則は、「電流の入力と出力の関係は0である」というものです。これは、ある回路網の1点に着目した場合、流入電流と流出電流は等しくなるというものです。

図1

図1:電流の法則

キルヒホッフの法則 ー第2法則ー

キルヒホッフの第2法則は、「閉回路における起電力と電圧降下は等しい」というものです。これは、ある閉じている回路網電圧源から電圧が出力されて、電圧源に戻されたときには0になっているという定理です。動画の中では、図2の回路上にあるAからFの電圧を測ることで、電圧降下の様子を実際に確かめることができます。また、図2上における電流の法則を当てはめた式を下記に示します。

図2

図2:回路例

図2-1

AからFそれぞれの点における電流の法則を用いた式

図2のような回路を計算する場合は、この法則を用いて、図3から図5のようにそれぞれの閉回路ごとに計算します。

図3

図3:閉回路①の電圧

図4

図4:閉回路②の電圧

図5

図5:閉回路③の電圧

動画では、V=5V、R1=1K、R2=2.2K、R3=1K、R4=2.2K、R5=1.5K、R6=6.8Kを使用しています。皆さんも試してみてください。

ここまで「キルヒホッフの法則」の理解を深めて来ました。ここで学んだ理論を応用してセンサーブリッジ回路について深く学んで行きましょう。

センサーブリッジ回路

センサーは微弱な電流や電圧(以下、信号源と表記)を出力して、物理量を電気信号に変換してくれるデバイスです。一般的には、微弱な信号源をそのまま扱うことはできません。最近のセンサーは、I2CやSPIなどのシリアルI/Fを備えていて、大変便利に使えます。ですが、世の中の全てのセンサーがシリアルI/Fを持っているわけではありません。そこで、センサーの微弱な出力をアンプで増幅し、センサー信号を扱いやすいレベルまで上げて使用すれば、それはそれでいいのです。しかし、信号検出にはノイズもつきもの。信号とノイズの比率を示すSN比が悪い(低い)と、ノイズまで増幅してしまいます。そこで考え出された一つのアイデアが、ブリッジ回路です。一つの閉じた回路(閉回路)に何らかの電流源があれば、その流れの向きによる電流変化から、信号を抽出することができると考えられました。

これを応用している製品の一つが、ロードセル(はかり)と呼ばれるセンサーです。このセンサーを利用した主な製品は、産業用のはかりや流量計などがあります。センシング方法も、バネや静電容量などいくつか方式があり、今回はひずみゲージ式ロードセルを使った実際の例をご紹介します。

図6に、1ゲージ法によるブリッジ回路と計装アンプを使った回路例を示します。

図6

図6:1ゲージ法ブリッジを用いた回路例

図6の回路は、左側のブリッジ回路と計装アンプで構成されています。ブリッジ回路は、同一の抵抗Rとセンサーに該当する(R+ΔR)から構成されています。このブリッジ回路における出力電圧が図7の式にある係数に該当します。図7の式は、キルヒホッフの法則とオームの法則を応用することで、閉回路であるブリッジ回路の電位差がセンサーの出力値として算出できます。係数に該当する式は下記の「計算してみよう」を参考にしてみてください。図7の式では、計装アンプで「GAIN倍」に増幅しています。この講座では 図6のブリッジ回路の計算方法および、その電圧変化が理解できれば良いと考えています。

図7

図7:1ゲージ法ブリッジを用いた回路計算式

図6の回路のメリットは構成が簡単なことですが、出力がリニアではなく少しカーブします。(図8)そのため、この結果をそのまま使うというよりは、係数による補正が必要になります。また、周辺温度によっても値が変化してしまうので、利用時には温度による注意も必要です。

図8

図8:1ゲージ法ブリッジ回路による出力値の変化
※アナログデバイセズ株式会社 2016年技術セミナーテキストから引用

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今回は、Alice Volt MeterのOffset/Gainの設定方法を解説しました。わからないことがあれば、コミュニティにでも書き込みしてもらえれば皆で疑問を共有できるので、些細なことでも是非書き込んでみてくださいね!